VCSEL は、製造されたウェーハの表面から垂直に円錐形のビームで光を放射するレーザダイオードです。VCSEL は、チップの片端あるいは両端から光を放射する従来の端面発光レーザダイオードに比べて、多くのメリットがあります。産業用、民生用を問わず、VCSELはさまざまな波長で利用できます。標準波長は、760 nm、850 nm、940nm の範囲です。
TRUMPF VCSEL のメリット
一体VCSELとはどんなものでしょうか。他のレーザダイオードと比べ、どんなメリットがあるのでしょうか。VCSEL の特殊な仕組みを可能にしているのは、どのような構造なのでしょうか。このページでは2種類のVCSELの詳細と、産業用および民生用のレーザダイオードの一般的なアプリケーション分野に関する詳細をすべてご紹介します。
VCSEL (Vertical cavitiy surface emitting laser) とは?
VCSELのメリット
ガウシアン形状も可能な丸いビーム、低ビーム発散、様々な光モード(マルチモードとシングルモード)により、VCSELはさまざまなアプリケーションに使用されています。
VCSELアレイは、その高い変調速度、ビーム品質、エネルギー効率により、3Dセンシング、LiDAR、光データ通信などのハイテクアプリケーションに最適です。
垂直方向に発光するレーザは設置スペースを節約でき、多数の発光素子を持つアレイを1チップで実現することができます。これにより、ウェハーレベルでの大量生産とテストが可能になります。
VCSELの消費電力は非常に低いミリワット台であるため、モバイルアプリケーションや、データセンターで使用する場合でも非常に効率的な運用が可能となり、同時に消費電力を大幅に削減することができます。
立ち上がり時間と立ち下がり時間が短いため、VCSEL なら超高速のパルス動作を実現できます。特に、光データ通信やToF(タイム・オブ・フライト)システムでの利用で重要になってきます。
VCSEL は、非常に狭い帯域幅でのスペクトル発光が可能です。
垂直方向に発光するため、偏光安定化素子やマイクロオプティクスなどの追加機能を容易に組み込むことができます。
VCSELの仕組み
VCSELは、連続して成長する多くのエピタキシャル層で構成されています。最上層は、電流注入のためのコンタクト層として機能します。その下には、両方のミラーのうち最初のミラーが続きます。このミラーはカーボンがドープされ、アルミニウム含有量の異なる複数の AlGaAs の層から成っています。トップミラーの反射率は、原則として約 99% です。
トップミラーに続いて、酸化物スクリーンがあります。これは、アルミニウム含有量の高い材料で構成されており、ウェット酸化によって部分的に不動態化されます。酸化物スクリーンの内側の(不動態化されていない)部分は、電流集中と導光に用いられます。酸化物スクリーンが、VCSEL の数多くの重要な電気光学パラメータを定義します。
アクティブゾーンには量子井戸が含まれています。これは 出力の強化に利用されます。
アクティブゾーンの下には2番目のミラーがあり、シリコンをドープして、上部ミラーよりもかなり厚みがあります。これは、できるだけ多くの光を反射してアクティブゾーンに戻すのに用いられます。下部ミラーの反射率は約 99.9% です。
シングルモード VCSEL とマルチモード VCSEL の違い
現在、VSCELにはシングルモード VCSEL とマルチモード VSCEL という2つのタイプがあります。シングルモードVCSELは、マルチモードVCSELに比べ、スペクトル純度が高く、発散が小さく、コヒーレンスの良い光ビームを生成します。シングルモード VCSEL は、主に多くの産業用センサーアプリケーションで用いられていますが、非常にコンパクトなマルチモード VCSEL は、主にモバイル型のコンシューマー用アプリケーションや高集積センサーに使用されています。